仮想通貨の有望な使用用途にDIDというものがあるのをご存知だろうか。
先日、マイクロソフトがDIDのネットワークを開発したというニュースが飛んできた。
マイクロソフトは5月13日、仮想通貨ビットコイン(BTC)ブロックチェーン上で動作する分散型アイデンティティー(DID)ネットワーク(プレビュー版)を発表した。電子メールアドレスやユーザー名などのデジタルIDをユーザー側が管理する分散型システムの開発を目指す。 https://t.co/3jSFp1V9j7
— デプロイ王子 Kazumi Hirose (@kazumihirose) May 15, 2019
そろそろ多くの方に知ってもらういい機会だと思い筆をとった。
DIDとは
DIDは Decentralized IDentity の略で分散型ID管理システムと意訳してもいいだろう。仮想通貨の目指す、Web3.0の個人のデータは個人に帰属する世界を目指していることは有名であろう。
その世界ではIDの管理も非中央集権的な仕組みで管理されているのが自然だと思わないか?そう、DIDは広義のIDを中央集権から解放させる仕組みなのだ。
広義のIDといったのは、なんらかのITサービスに適用されるログインIDだけでなく、免許証やパスポートといった自己証明を行うIDも示すからだ。もちろん、ログインなど行うIDが一番我々のデジタルライフにおいて、一番活用されているIDといえよう。
エンタープライズ向けのID管理でどうみてもリードしているのはWindowsからビジネスエリアを席巻したマイクロソフトであろう。
マイクロソフトのホワイトペーパーから一つの適用例をもってきました。この例では卒業証明を企業に提出する場合の例が出ている。大学はDIDに載せられる証明書を個人に発行する。個人はその証明書をUser Agentにて管理を行なっている。
その証明書はブロックチェーン上で管理保持されているわけだ。そして実際に必要になったときにUser Agent(まあスマホのアプリと思っていいです)を用いて提出を行う。
これにより個人のIdentityの証明を中央集権的な管理者なしで行うことができるわけです。
DIDを推進している組織体は?
実はマイクロソフトはDID推進派として有名な企業であった。なので今回の発表も彼らの予定に沿った既定路線の出来事である。今回の記事では、 DIFと共同開発した旨が発表されている。
DIFはDIDの実用化を目指している業界団体である。DIDをうまくビジネスに活用していきたい多くのIT企業が名を連ねている。ほら、マイクロソフト、IBM、Accenture。GAFAではない、ITジャイアントたちの名前をみることができる。
聞いたところによると、マイクロソフトはFacebookを誘ったらしいのだがにげもなくことわられたようだ。このWEB3.0の流れにおいてはGAFAが今度は旧体制として位置付けられていることがおもしろい。
マイクロソフトの取り組み
最近は結構好きな企業である。DIDへの取り組みも目を見張るものがあります。
認証関連事業ではマイクロソフトは世界の肝である点をおさえている。会社のPCの多くはWindowでありログインするときの認証は各PCに紐付けではなく会社のサーバーらしきところで統括されている
システムはマイクロソフトが長年エンタープライズビジネスを推進している中で構築した最強にビジネスドメインに食い込んでいるポイントである。
彼らのクラウドサービスのAzureでは結構早期からブロックチェーン構築サービスを提供している。
彼らのゲーム事業の中で実験的にブロックチェーンを組み込むようなことを行なっている。筆者のブログの記事ではあるがマイクロソフトの取り組みをまとめているのでこちらをご覧いただきたい(https://harukataro.com/microsoft )
マイクロソフトは、B2Bの営利事業以外の適用として、DID2020という活動を行なっている。本活動は人道的な活動で、紛争地域など、無政府状態で、個人のIDをデジタルIDとして提供することを推進している。政府が信用できないエリアと非中央集権の仕組みの相性の良さはイメージできるでしょう。
彼らのDIDの取り組みに関してはこちらのホワイトペーパーにまとめられている。こちらもご一読いただくと理解が深まるでしょう。最初に読む文献としてはわかりやすい部類にはいります。
マイクロソフト発表のDIDシステム ION
Bitcoinに代表される現在大規模ネットワークを貼っている、仮想通貨プラットフォームの弱点であり、DIDなどのシステム運用するときのネックは、処理能力です。今回、マイクロソフトのシステムではSidetreeと命名し、従来のブロックチェーンレイヤーの上に新たなレイヤーを追加しトランザクションの処理数に対処する方法をとりました。
名前をIONと命名しています。ION(Identity Overlay Network)は、いわゆる仮想通貨で検討されている、コンセンサスを必要とするLayerではなく、コンセンサス部分はLayer1のBitcoinに委ねられています。
ION自体はBitcoin以外でも動作することを見据えて設計がされているようで、Bitcoinの趨勢にしばられない施策が取られているようです。
IONは、Bitcoinのテストネット上で動作をさせており、お試しとしてChromeのエクステンションとしてDIDの発行ができるようです。
もし興味のあるかたはお試しいただくといいでしょう。その他DIDをお試しできるプロジェクトとしてはuPortがあります。iPhone上でも試せます。
まとめ
マイクロソフトのIONについては下記のページで声明がありました。ぜひこちらからたどっていってください。企業向けのID管理においては右に出るものはいないと思われるマイクロソフトのDID戦略からは目が話せません。ION、DIDのワードはぜひ覚えておきましょう。
あと会員限定ですがToken LabにDIDの現在の状況をまとめた記事を投稿しています。もしTokenLab会員であればご一読ください。
Token Labって何ですか?という方はこちらの記事ご参照ください。